2005年 08月 23日
カラテ追想記 NY編3
二十数年前の当時だからこそ、私は勝てたのだと思う。
今程、カラテも格闘技も一般的ではなかったNY、そして、当時から自分のカラテは、 他のそれらに比べても特異なモノであったこと。 そして、戦略…。 すべてが、揃っていたからこその「勝ち」であった。 今なら…たぶんもう少し違う方法をとっていたに違いない。 しかし、其の時の「覚悟」だけは、今の自分にも勝るとも劣らないものであったことを 思い起こすことが出来る。 二人目、黒人二十代後半、身長180体重70㎏台か… 確か名は「ジム」と皆に呼ばれていた。 本名なのか何なのかは知らない。 ただ、黒人にも関わらずにここのクラブに通っているくらいなのだから、そこそこ社会的なモノを得ている人物には違いない。 彼は、後に私の一番弟子だと吹聴していたのだが…。 とても熱心で人間的にもいい奴だった…。 其の時の彼は、いかにも挑戦的な眼光をもって私の前に進み出てきた。 彼の顔を見遣ると…何かくすんでいる。 不思議に思いながらも、「構え」をとり、大きく、そして鋭く「気合い」をかけた。 その瞬間、 彼の身体は、何かに触れたかのようにびくっと揺れ後ろへ、 不安定に飛び退いた。 何故くすんでいるのか、わかった…。 「恐怖心」であった。 東洋人なら「顔は青くなる」というところだろうが、彼は「くすんだ」のである。 何で知ったのかしらないが、奇声を上げながら両の回し蹴りを振り回してくる。 恐怖にかられ無茶苦茶な振り方である。 数歩後ずさり、相手の足が切り替わるタイミングを読む。 やはり、ドタバタした蹴りである。 速さは、あるが、あまり威力は感じられない。 右の上段蹴りに合わせ、半歩出る。 左腕で膝下近くを弾き上げる。 相手は、ゆっくりと後ろへバランスを崩していく。 相手の呼吸が、変わるのが聞こえ、そして、顔が見えた。 あっけに取られた顔だ。 次の刹那、私は右の正拳を彼の咽下に打ち込んだ。 今でもそうだが、格下の相手や後輩相手に蛮勇を奮うことを卑しいものと認識しており、大抵は、相手に合わせ怪我のないように組手をおこなっているのだが… このときは…違う。 相手を完膚なきまでに叩きのめすため。 そして「恐怖心」を植え付け「畏怖心」を抱かせるために、あえて全力で「突く」。 確実に相手をしとめる為に、相手の急所・弱点をめがけ、正確な一撃を打つ。 明らかに骨の折れた感触が、拳に残った。 相手は、居並ぶ道場生の中へ倒れ込んでいった。 獣じみたうめき声を上げ、蹲っている。 其の彼をだれも助けようとしない。 やはり、黒人だからか… 次を見遣ると相手は、もそりと立ち上がってきた。 こいつは…この道場の中でもっともボス格の奴である。 流石にいい面構えだこと…まるで赤鬼だ。 (勿論、見たことはないが、いたらこんな感じだろうと思った) 何故か不謹慎に浮かれている自分がいる…。
by katsumi-okuda
| 2005-08-23 15:54
| 読物・語り部
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プロフィール
武道歴四十余年。主たる武道極真カラテ。昭和の名人・達人に薫陶を受け現在、私塾教育経験を活かし新たな指導法を展開。自らも日々稽古を続け、理論と実践の合一を目指しています。
道場指導以外にもスポーツクラブでのカラテ普及に努め、今まで空手に縁のない人たちに空手や武道の良さを知ってもらっています。 カテゴリ
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