2011年 10月 10日
痛みにも、いろいろ
ふと思う事を書いてみる。
誰でもそうだが、痛いのは嫌いだ。 身体のどこが痛くても、人は不快になり不安になるもの。 頭が痛い、歯が痛い、お腹が痛い…どこが痛くても嫌だ。 それは、当たり前の事である。 人として少なからず働く自然の有り様。 それなのに私たちは… 敢えて、その「痛み」の中に身を投ずる。 いや、痛みそのものの質は違うかもしれないが、痛いという事に変わりはない。 なのに、自らをそこに運ぶことを常としている。 別に変な趣味があるわけではないんだが 時としてそれを知らない人たちからは、そう思われたりする。 スポーツは、どんなものでもそうだが見た目の美しさとは裏腹に「激しさ」を秘めている。 そして、それに伴う「ある痛み」を乗り越えてこそ享受出来る世界がある。 例えば、華麗に見えるシンクロは、無呼吸の苦しさは想像を絶するという。 例えば、スキーの疾走には身体にぶつかる厳寒の疾風と足下から伝わる絶え間ない振動とその騒音… 優雅に舞い躍動するバレェの人たちの身体の軋みは、私たちのそれに酷似し、その激しさは凡人には想像し得ない… …どちらにせよ「やった者にしか、わからない世界」である。 そして、私たち「実戦」つまり「フルコンタクト空手」の組手もそうである。 とかく見た目だけで、どうのこうのと言う輩(ここのところは少なくなったが…)は、本当に一度その場に立つ事をお勧めしたい。 私が始めた頃も、空手に対するある種の幻想があった。 「あんな突きや蹴りがあたったらひとたまりも無い…」 「あんなに打たれてて痛くないの!?」 痛くない訳はないけど、ガチでやってる時、正直感じてる暇がない。 そして、思っていた以上に人の身体って頑丈なんだということ。 始めた当初は、それこそ体中が痣だらけ。 しかし、慣れというモノは恐ろしいもので、痛みは打たれたその時のほんの僅かな瞬間だけで収まる。 そして、そのすぐあと、何事もなかったように動くことが出来る。 余程の事が無い限り痣は、あまり出来ないし残らない。 …無論、個人差はあり、いきなり大丈夫な人と暫く時間がかかってしまう人とそれぞれではあるが…。 それでも、続けていく事でその「痛みに対する耐性」は、必ず付いてくる。 ただ人である以上、打突の振動に対する本能はある。 例えば、胸と腹を打たれた時、大切な臓器があるせいか、それを庇おうとする本能が働く。 身を固くする、防御の姿勢をとろうとする。 それを補う為に強固な身体を稽古によって磨く事に余念がない、いや忘れてはならない。 まず、それなくして組手は立ち行かない。 相手の打突を一発も受けずにいけるにこしたことはない。 しかし、競技としての観点で見れば、それは限りなく不可能に近い。 ために、それ相当な身体と攻防の技を練らなければならない。 そして、その行為は絶えず積まなければならないということ。 それほど希薄な感覚である。 出来る限り「実戦の場」に立つ事は理想ではある。 しかし、歳や状況によっては、それも侭ならなくなる。 その為にふだんの稽古での思考は、大切となると考えている。 口だけならなんとでも言える。 しかし、それが実戦に即していなければ、多くの者の賛同は得られない。 自らが感じた痛みや苦しみでなければ、モノは伝わらない。 例え少ない経験でも、それを補って余りある思考を巡らせることは伝える者の勤めでもある。 何故、痛みに耐えなければならないか。 苦しさに敢えて進まなければならないか。 次に続く特に子供達に正しく伝えてあげなくてはならない。 痛みや苦しさ辛さを知り、正しい我慢をする。 そこに人としての正しい成長があることを疑わない。 …しかし、いい歳して、もうあまり痛いのは…嫌ですね。 ですから、私の組手は「当たらない」と言われるのかもしれません。 それでも、痛みの耐性の為の補強と鍛錬は、怠りません。 痛みで萎える自分が、絶対に許せないので… あ、でも、頭や歯が痛いのは絶対我慢しませんし、出来ませんので悪しからず。
by katsumi-okuda
| 2011-10-10 23:46
| 稽古日誌
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プロフィール
武道歴四十余年。主たる武道極真カラテ。昭和の名人・達人に薫陶を受け現在、私塾教育経験を活かし新たな指導法を展開。自らも日々稽古を続け、理論と実践の合一を目指しています。
道場指導以外にもスポーツクラブでのカラテ普及に努め、今まで空手に縁のない人たちに空手や武道の良さを知ってもらっています。 カテゴリ
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