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武道カラテ稽古日記

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「演ずる」ということ

 昨日に引き続きオリンピックの「男子フィギァ」を観ました。
見事、高橋選手は銅メダルを捕りましたね。再起不能とまで言われた怪我にもめげず「挑み」続けた価値あるメダルだと賞賛されてしかるべき「演技」でした。
人は、やれ天賦の才があるだの「あきらめない」気持ちの強さだのときいた風な事を言います。
しかし、その辛さや苦しみ、焦り不安は、当の本人しか知り得ないことです。
それを全て含めての快挙です。感慨も一入でしょう。今回、入賞に終わった二選手も、これを大きな糧として今後とも精進して頂きたいと思いました。

 先日も、申したように私も型をやったり、競技として人の型を評価する側にあるために、このような「演技」を観る事によって本当にいろいろなことを考えさせられました。

 私たちも、多くの「型」を修得していきます。
始めの頃は、本当に昇級の為だけに「お座なりに」やっていたに過ぎませんでしたが、年と共に型の持つ意味合いや効用を自分なりに感じ、何とか自身のカラテ、組手に反映出来ないか…。
それこそ今でも、試行錯誤の毎日です。

曲がりなりにも、人に型を伝えなければならない立場です。
より正しく行う事を、そしてより身に沿うように稽古に臨んではいますが、時としていい知れぬ疑問や漫然とした不快感に纏わりつかれることが、ふとあるものです。
それが、何なのか…ただ型を修得していく精神的な苦痛なのか、巧く行えない自分の手足に対する苛立ちなのか…釈然としないまま、それが霧散するまで「鍛錬」に没頭するしかありませんでした。

しかし、ある地点、領域から「その感覚」が、大きく転換していくことを感じます。
そして、又、それが何故そうなのか、やはり判然としないまま…。

この前、数日で千回以上の型稽古を自身に課した折、何となくその過程が分かりました。
巧く出来なくて嫌な時、出来始めた時の小さな達成感、そして又良くも悪くも「慣れの世界」を垣間みて、思う事がありました。

それは、型が自分の「身の内」に入り込んだとき。
つまり、頭で意識せずとも、手順を追えるようになったとき。
そこで同じ型をやっていながら、どのように「心」や「気の持ちよう」を意識しながら変えていけるか…そして、また、よく「相手を想定しながら突き蹴り、そして防ぐように」と言いますが、それだけでは何か足りていないと思わなければ、真に自らの型にならないのではないか…。
そんなことを感じていました。何かが、足りない…。

これは、私の勝手な持論です。
「型に遊ぶ」「型に自身を演ずる」ことをしなければならないと…。
大変抽象的な物言いになってしまうのですが、例えば、型を何も知らない人たちが観ていて「何か分からないけど凄い」「相手が見えるようだ」と言われるまでに型をまずは、やってみたいと思っています。そのためには「型」をただ義務感のようにやっていては、醸し出される空気感が、やはり違って当然なのではないでしょうか。
決められた手順と制約された型の世界というものは、何も私たちの世界だけではありません。
日本古来の武芸・舞踊すべてに秘められた「行」であり、その世界の第一人者のそれは、多くの、それこそ言葉も文化も違う人たちを魅了し続けている事実があります。
そこに私たちの「型」の答えの一つが、あると思っています。

型を稽古している子供たちに、よくこんな言葉をかけます。
「自分が、一番巧いつもりでまずは、やってみよう」
この言葉は、そのまま私たちに振り返ってきます。
何も考えずに言葉に語弊はあるのですが、型を楽しむつもりで型を「演ずる」ことが、大切だとつくづく感じています。
楽しそうに動いていない人の動きは、例えどんなに正しく動いていても「動いている」ただそれだけです。子供たちが、楽しそうに遊んでいる時の姿は、それだけで「絵」になります。

何も考えず、そこに自身で「世界」を造り上げ、型を「演ずる」ことが出来たなら、その型は観ている人たちを魅了するばかりか自身のカラテに大きな深化をもたらしてくれるものと思っています。
観ている人たちを感動させるまでは到底いかないまでも、そうありたいと切望しながら型を稽古していく事こそ「型が型で終わらず」次に進む一つの大切な手立てとなるものと強く思っています。

ただそれは、何も難解な型ばかりではないことを注釈としておきます。
それよりも、ただ「基本」の型で人を唸らせる「動き」「演技」でなければなりません。
そして、私たちの「一人相対」(シャドウ)も同様です。
ただシャドウのための動きでは、何の足しにもなりません。
それをいかに「実戦」に近づけ、いかに「使える」動きにしていくかが要です。
それも又「型」では、ないでしょうか。
by katsumi-okuda | 2010-02-20 01:43 | 稽古日誌