2009年 02月 19日
型の上手は組手上手…
よく言われる事の一つに…
「型が上手な者は、組手も上手い。又、その逆もある。」 これは、何を意味しているのだろうか。 それは、型が上手くなれば組手が上手くなる…というほど単純な話しではなさそうである。 多くのカラテと称する競技の場合、型と組手には大きな隔たりがある。特に私達のフルコンタクトに部類されるカラテの場合、それはより顕著に現れるものである。 どこをどう観ても、今やっている型と組手に見かけ上の類似点を見て取る事は難しい。というより相当な無理があると感じる方が、普通である。 それは、競技としての双方の成り立ちの違いからくるものである以上、見かけの相違点を論ずるのではなく、内包する精神的又は身体操作を中心に考え、見て取らなければならないと言える。 しかし、身体操作を論ずる強化するのであれば何も型でなくても、よいという声も聞こえてくる。その結果、科学的、合理的なトレーニングによってそのパフォーマンスを向上させようとする選手が、少なくないのも事実。 では、その専門的なトレーニングによって求められる成果が、確実に得られているかどうか。 その答えは正しくもあり、間違いとも言えるのが現状である。 なぜなら、そのトレーニングを行う者一人一人の資質に大きく起因してしまうからである。強い者はより強く、筋肥大に長けた者はより以上になるだけであり、弱い者のそれには、おのずと限界が現れてしまう現実がある。体重50㎏と100㎏の者が、出来る限界値に相違があるということである。 哀しいかな同じトレーニングを積んだ日本人と外人の、それこそが「力の差」の現れである。 同じトレーニングと似たような戦術を持って外人選手に苦渋を飲まされるというのは、そこに一つの原因があるということを私達は、認識しなければならない。 競技、スポーツの世界で用具、道具を使用する差が、あるにせよ日本人選手が、外人選手と互角かそれ以上の成果を上げている事例も、少なくない。野球のイチローを初めとした競技者たちは、では何をもってその「力・体格差」を克服したのであろうか。 又、剣道の高齢者の諸先生方の技量のそれは若手の力を完璧に封じ込める冴えをみせる。それは、いかにして成るものなのか。 そこに日本人特有の思考「基本を大事にする」「基本に還る」という考え方と意識が、厳然として横たわっている事実がある。 ただ外国人の競技者に「基本」がないと言っているのではない。彼らにも、彼ら也の「基本」が存在する事も忘れては成らない。 そして、私達も私達也の「基本」を昇華させていく必要性が、あることを決して忘れては成らない。 相手に悟られずに行う打突の威力は、相手を怯ませる倒すに足るものを時として現出するものである。 そして、それをどんな状況でも、施せるようにするのが稽古・鍛錬であり、それを実現させる術が「基本」であると断言する。 ちなみに私の現在の体力の数値は、若い指導員達のそれと比べてそれほど勝っているとは、言えない。 確かに同じ五十路の人達よりは、いくらかましではあるが、それでもフルマラソンを平気でこなす同輩の人達の足下にも及ばないし、ミドルエイジのビルダーのベストには、ほど遠い。 しかし、それでも選手相手に互角の競技組手が、出来る現実があるのも事実である。 ただ人より稽古の日々が、長いだけ…それによって得られた経験が適切な動きをさせてくれていることに思い当たる。 型を使いこなしているのではなく、型や基本から得られた情報を「頭」や「心」が、適切にその時々四肢に配分しているに過ぎない。 型が上手になるということは、頭や意識が適切に動かせていることである。その感覚が、組手で使えているということだと感じている。 さまざまな稽古を通じ、私達は「頭を鍛えている」のである。 脳は衰えない、否活性化すれば、若いとき以上の使い方が出来るとも言われている。意識して稽古をするとは、そのことであろう。 型を上手にやれる感性の持ち主ならば、一人を相手にする競技組手程簡単な組み立ても、ないのかもしれない。 そして、それと分かる刹那は、いつもいつのまにか「やってくる」ものだということ…だから、稽古を止めるわけにはいかない。
by katsumi-okuda
| 2009-02-19 02:14
| 評論
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プロフィール
武道歴四十余年。主たる武道極真カラテ。昭和の名人・達人に薫陶を受け現在、私塾教育経験を活かし新たな指導法を展開。自らも日々稽古を続け、理論と実践の合一を目指しています。
道場指導以外にもスポーツクラブでのカラテ普及に努め、今まで空手に縁のない人たちに空手や武道の良さを知ってもらっています。 カテゴリ
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