武道カラテ稽古日記

ブログトップ | ログイン

極真カラテ:基本の意味その2

 今回から「基本」の意味を解釈していきたいと思います。ただあくまでもこれは、私が、数十年にわたり実際にやった結果(私及び道場生を含む)から得たものだと言うことです。ただの思い付きではありませんが、科学的な検証が十分になされていないものもあることは御容赦下さい。その点については、別の解釈をもって述べさせてもらいます。
「三戦立ちの意味」
この立ち方は、剛柔流系によく見られる立ち方の一つですが、慣れるともっとも安定した立ち方として知られています。初心者には下肢の安定を学ばせる目的があります。では、選手や上級者にとっては、どうでしょうか。基本の最中、絶えずこの立ち方を意識し崩れない安定感をもつことは、そのまま組手でも効用を発揮します。
つまり、接近戦で打ち合いになった場合、相手に押し負けないようにしようとした場合必然的にこの形から始まります。そこから相手を押し崩していこうとする場合、前足を進め「高い前屈立ち」へと変化していきます。その場合も相手に押し負けないよう前の膝を締め、後足45度にしっかりと床を踏み締め床からの反力まで身体に取り込めるよう身体は、意識し始めます。好むと好まざるとに関わらず身体は正直に対応していきます。
 ちなみに今言われるような「組手立ち」は本来ありませんでした。これは、競技が進化する過程で生み出されたものであり、その原形は「後屈立ち」であり「猫足立ち」もしくは松濤館系に見られる「荘鎮ソウチン立ち」が、変化した亜種なのです。

 三戦の両つま先の延長を伸ばしていくとそこには三角形が、存在します。また、正拳中段突きで身体の前で両手を伸ばし拳を合わせた状態も三角形。相手を押していくに最適な四股立ちもつま先は外への三角。廻し蹴りに代表される下肢のスピードを上げる際の軸足つま先を中心としてかかとは相手に向かいます。この状態もつま先外の三角形なのです。相手を突いていくために肩を入れてもそこにも三角が表れます。柔術に代表される固め技も投げ技さえもこの三角の理論を利用・展開したものだと言われています。
 つまり、この三戦の立ち方によって私達は、ふだん使わない筋肉や神経を活性化させるとともに最大限に力(スピード・パワー)を発揮・集約出来る三角形を意識していることになります。ふだんあまり意識することもない身体の中の「三角形」。それを毎度、稽古をすることによって確認をしているのです。人間は、その日その日で心身の体調に違いがあります。そのわずか微妙な差を知らしめるために私達は、基本を行っているともいえないでしょうか。
 それと体験的に選手達が、言っていることに「三戦の型をやっておくと組手で呼吸と身体のバランスが取れ易い」ともよく聞きます。三戦の呼吸法にしても流派によってさまざまなのですが、しっかり息を吐ききり身体を絞めた状態は、確かに打ち合いの最中のそれに等しいとも考えられます。当たり前ですが、組手は非日常的な身体にとっては危険な状況を意味しています。このような身体の状況を毎度組手のみで作ることは、得策ではありません。なぜなら、組手に付きまとう怪我・故障の問題もそうだと思いますし組手の場合、試合となれば誰と当たるか分かりません。それなのに組手の稽古の場合、いつも決まったメンバーとばかり当たってしまいがちになります。そうすると身体は、知らず知らずのうちに「慣れ」が出てきます。身体は、そのような本能的な場において本能として対処・対応していきます。そうすると限られた状況においてのみの身体操作しか出来なくなることが往々にして生じます。そのような弊害を是正したり身体操作を矯正する場としての「基本」があるのだと考えます。
 確かに「基本」の発祥は「型」を普及するためにのみ生まれたものかもしれませんが、その「基本」をやりつくして名人・達人が生まれたことも忘れてはなりません。

 きちんと立つことの難しさ。意識しなくては私達は、体軸を意識して立てません。
そんなことで果たして正確な技と呼べるものが出せるのか、つくづく考えてしまいます。昨年、亡くなられた人間国宝の京踊りの先生の立ち姿をTVで見る機会がありました。素晴らしいの一言です。何がというのは分かりません。美しい景観を見て何がと言えないのと同様の感覚がそこにあります。ただ立っているだけでその存在感、前に進み出すとアタカも後ろの背景が動いているような錯角さえ覚えます。これは、能・狂言の先生方にも共通するものでした。武道にも共通する気配を感じさせない事のオコリを感じさせない立ち方、そして歩の進め方が、そこにありました。
 私は、試合の中でさえそれが出せるよう稽古に努めます。そうしなければ、何のための「基本」なのか分からなくなってしまいますから…。

 次回は、よくある質問ですが、「なぜ基本の中段突きなのか、それより組手のワンツーをもっとやったほうがいいのではないか」「裏拳打ちや前・横蹴上げは無意味ではないか」という質問に答えたいと思います。
by katsumi-okuda | 2005-01-16 15:13 | 評論