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武道カラテ稽古日記

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ふと…邂逅

 何かの拍子で昔の事を思い出す事があります。
ほぼ毎日、カラテのことを考えているような身ですから致し方ないかも、しれないですが…。
今となっては、どれも懐かしい事ばかりですし、また少し残念に思う事も、少なくありません。

 支部長合宿というものが、ありました。
当時、年長の支部長たちの特別昇段と総裁の元、再び「一道場生」に戻り稽古を付けてもらうといういう意味合いの合宿が、例年五月の連休前後にありました。

 あまりその意味合いも見いだせず、又仕事も多忙でしたので参加する事等、夢にも考えていなかったのですが、当時の支部長からの誘いを断れず、たまたま時間的に余裕ができた為「後学の為に参加しよう」と思い立ち湯河原に発ちました。

 すでに多くの支部長たちが到着し(そのとき、初めて故小野寺師範とも親しくさせて頂きました)前年世界チャンピオンになった緑君、そして海外の支部長たちの顔もありました。
車で参加したせいもあり、緑君とは良く合宿中、街まで所用で出かけ、いろいろと親しくさせてもらい、その人柄に感服した事を覚えています。

 懐かしい総裁のかけ声のもと稽古は、始まります。
しかし、私といえば、その春に肩を脱臼し完治しないままの稽古参加…言い訳がましいことは、言っても仕方ないと考え、稽古するも、どうしても不具合は誰の目にも明らかです。
そのため総裁からは、幾度となく叱責を頂戴する事となりました。
しかし、その最中「それは(右肩)どうかしたのかね」と尋ねられ「オス、脱臼をして…」説明が終わるか否か「何故、そういうこと先に言わないのかね!?だめじゃないか、無理するな!!」再び怒られてしまいました。しかし、その目には優しさがあり、とても有り難く思いました。
…ですが、手技に関係ない稽古は一切手を抜かせてもらえないのは当然…
ちなみに合宿中の稽古の大半は「回転」ばかり…深夜まで鯨飲している全員、本気で吐きながら「回って」たことを思い出します。

また、夕食後、自己紹介の折り、自分がかつて総本部にいたこと、そして母の看病の為道場から疎遠になってしまった事を話すと、とても心配そうに「お母さんを大事になさいね」と仰って頂いた。
そして、その後、仕事の都合で皆よりも、一日早く帰宅しなければならず、一人車に乗り込もうと準備をしていたら、そばの浴室のガラス戸が突然開き「なんだもう帰るのかね!?」と総裁が、上半身裸で現れ、思いっきり吃驚しましたが、窓越しのその分厚い掌を差し出され握手して頂きました。
…その大きく厚い掌と温もり…今でも、思い出してしまいます。

総裁の良いも悪いも、少なからず承知しているつもりです。
ですから、こんな「笑顔」や「優しげ」そして「寂しげ」な表情を見せられたら…「やっぱり、ついていくしかないなぁ」と一人、感慨に耽りながら岐路についたことを鮮明に思い出します。

今となっては、昔話ですが、総裁は唯一無二の方でした。
ですから、誰もその真似をしてはならないのです。否、真似をしたところでどうなるものでもないのです。私たちは、総裁の考えておられた事を今に正しく昇華させていかなければならないと思っています。その残された精神性は、私たちの根底にいつまでも生き続けていくものだと思っています。
ただ昔のことを懐かしむばかりでは、なりません。
悪習となるような因習は取り除き、今現代に活きる「極真カラテ」を創造してこそ真の継承といえるのではないでしょうか。そのために私たちは、まずは稽古に当たるべきだと思っています。
また、その中からしか掴めない事を幾度となく改めなくてはなりません。
by katsumi-okuda | 2010-06-09 01:20